「スマートビル」という言葉をご存じでしょうか。スマートビルとは、施設の運用効率を高め、生産性を向上させるための、スマートな(賢い)ビル管理システムを組み入れたビルです。「スマートビル」という言葉は、単なるはやり言葉ではなく、ビルに関連するデータを組織目標の達成に向けた情報・アクションに変換する可能性を提供できる、つまり確かな将来性を認識させることができる言葉です。これから、今米国で注目されている動向を3回にわたってお伝えします。
第一回は、スマートビルの背景についてです。
ユーザーニーズとテクノロジー
ビルオーナーが、ビルの運営上日々気になっていること。それは、ビルの運用コストを削減し、社内目標に定めたサスティナビリティを実現すること。そして同時に、テナントが安全かつ快適に過ごし、高い生産性を維持できるよう、ビルのパフォーマンスに関わる広範かつ詳細な情報を把握することではないでしょうか。これらを実現する最新技術があるのならば、ぜひ活用したいと思うのではないでしょうか。
スマートビルを構成する機器は、これまでのビル管理や制御の機器のような一方向の通信だけではなく、機器自体に搭載された高性能のCPUを駆使して相互に通信を行い、必要なアクションにつながる「会話」をします。さらに、人間の判断を介さず、機器間の「会話」だけでトラブルを予測し、事前回避できるようなアクションをとることまでできるのです。つまり、ビルオーナーは、スマートビルを導入することで、ビル全体のあらゆる設備、システムの能力を最適化し、施設における省エネや運用効率などの目標を達成できるようになるのです。
このようにスマートなシステムはそれ自身でビル管理を実現することはできますが、その生産性をさらに向上させるような調整までをすることは困難でした。スマートなシステムの潜在的処理能力を最大限に活用するにはそのための最適なアプリケーションが必要だからです。ジョンソンコントロールズではそのようなアプリケーションを提供できるよう開発を進めています。
近年の技術の進化によって、企業全体の施設を強力かつシームレスに可視化・一括管理できる能力はますます高まり、地域内の環境から国全体、さらには複数の国家にまたがる環境まで一括して管理することが可能となります。最新の施設運用システムに投資することで、ビルオーナーは従来とは比較にならないほど大きな投資効果を得ることができるようになったのです。
BAシステムの進化
この数十年間にビル管理業界は大幅な進歩を遂げ、メーカー独自の専用システムからマルチベンダーによる相互運用を可能とするオープンアーキテクチャへの移行が進んでいます。この結果、現在のビルオーナーはさまざまなメーカーのシステムを柔軟に選択できるようになりました。既存の設備を生かしつつ、一部を別のメーカーの製品に替えたり、追加したりすることもできます。また、共通の通信言語を使うことで、ハードウェアやソフトウェアを替えても、引き続き重要な設備機器の運転管理を続けることができます。
そこでカギとなるのが、オープンな通信プロトコルです。従来からあるModBus®なども依然として使われていますが、BACnet®、LonTalk®のなどの通信プロトコルは、よりオープンでより高度な相互運用性を実現しており、今後はこのようなオープン標準のビル管理システムが増えるとともに、各装置機器構成の柔軟性も確実に高まります。
また、ITインフラが充実した今日の環境では、さまざまなビルシステムに適した高速通信路が整ってきており、柔軟でセキュアなITネットワーク上に、温度制御システム、給与管理システム、ネットワークサーバーなど、施設管理者の管理責任の範疇を超えた多種多様なシステムが同居するようになります。このような状況では、汎用言語を用いることにより、ビルのパフォーマンス情報がリアルタイムに提供され、直観的に理解し、モニタリングがし易くなるのです。IT管理者や施設管理者、また経営者が、ビルのパフォーマンスについて容易に把握できるようになってきたのです。