課題 Challenges
ESCO事業の活用による設備改修と省エネルギー化の実現
施設利用者の利便性と快適性の向上
運用効率の改善と作業負荷の低減
ソリューション Johnson Controls solutions
空調、熱源、照明全てにおける改修の提案と施工
効果的な室内環境を実現するエアハンドリングユニット(AHU)にインバータ制御導入
空調システムの改修と再構築、個別空調の導入
最新のMetasys®ビルオートメーションシステムの導入
成果 Results
1次エネルギー量39%、二酸化炭素排出量42%、エネルギーコスト40%削減を実現
外気負荷を50%以上削減。インバータ制御による室内温度に応じた風量可変により、ファン動力を40%低減
エアコン電力量を約30%、照明電力量においては60%超の低減を達成
中央監視システムのいつでもどこからでも直感的な操作を可能にし、オペレーターの作業効率を向上
施設利用者による空調操作を可能にし、利便性と快適性の向上に寄与
「環境性、経済性はもとより、工期短縮も見込めるESCO事業は、これからの施設運用に際し、非常に価値ある取り組みです」
富士市役所 市民部文化振興課 文化担当統括主幹 渡辺哲成 氏
老朽化著しい設備の省エネ化と運営効率化を目指し、ESCO事業を採用
「会館運営がいつ止まってもおかしくない状況が大きく改善されました。施工に携わってくださった皆さんに感謝しています」と話すのは、富士市役所 渡辺哲成氏。毎年40万人が利用する市の文化芸術拠点「ロゼシアター」を管理する担当者のお一人です。開館から25年が経過したロゼシアターは、老朽化や機器の不調が著しく、なかでも熱源設備の経年劣化は年々深刻に。修繕では対応できない設備も見られたことから、今回の改修に踏み切りました。その際、富士市が採用したのが、ESCO事業です。これは、省エネルギー改修にかかるすべての費用を改修後の光熱水費削減分でまかなうスキームを指し、施主は多額な初期投資無しに最新設備を導入できるうえ省エネルギー化とランニングコストの低減を図れます。一方、ESCO事業者は施主が目標とする省エネルギー課題に対して計画から設計・施工、運転・維持管理、資金調達まで包括的なサービスを提供。エネルギー削減効果を保証しながら、その一部を報酬として受け取る仕組みです。
「富士市では過去にESCO事業を採用した結果、高い省エネ効果と民間事業者のノウハウを活かした施工計画によりスピーディに改修できた経験を持っています。ロゼシアターにおいてもこうした効果を見込み、ESCO事業の採用に至りました」と渡辺氏はその経緯を話します。
空調システムを「中央」管理から「個別」管理に。利用者の利便性が格段に向上
ジョンソンコントロールズは、ESCO事業認定事業者として、舞台関係をのぞく全設備の改修提案はもちろん、施工から維持管理までを一括で担当しています。空調設備においては室内CO2濃度を自動感知し、モーターの回転数を微調整することでCO2提言と省エネルギー化を実現するインバータ制御のエアハンドリングユニット(AHU)を導入。さらには、全館を画一的に管理していた空調システムの一部を個別へと改め、自由度の高い空調制御を可能に。このほか高効率熱源の導入、照明のLED化、エレベーターのリニューアルなど、多種多様な省エネルギー設備とソリューションを導入しています。「オン・オフの二択しかなかった空調を負荷に応じて制御可能になり、快適性と省エネ性の両立が実現しました。また、文化活動にはバレエやダンスなど動的なものから、吹奏楽や合唱など静的なものまでさまざまです。しかし、これまでのセントラル空調方式は、一度冷暖房のどちらかに切り替えた らそのまま稼働させるしかありません。タイミングによっては、利用者から『暑い』『寒い』とご意見をいただくこともありました。今回、個別空調方式になったことでご好評の声をいただいています」と渡辺氏は話します。
このほか中央監視装置には、Metasys®ビルオートメーションシステムを導入。これは、以前からご利用いただいていた当社システムを更新したためスムーズな移行になったと同時に、従来よりもグラフィカルかつ直感的なものへと進化し、操作性の向上にもつながりました。さらには、Metasys®ビルオートメーションシステムにモバイル端末からもアクセスでき、オペレーターが中央監視室に戻ることなくその場で対応できるようになり、作業効率が大きく改善されました。
建て替えから改修へ。公共施設は環境経営の時代に
ロゼシアターは今回のESCO事業により、改修前と比べ、1次エネルギー量39%、CO2排出量42%、エネルギーコスト40%の削減が見込まれるほか、当社との15年間の契約期間におけるコストメリットは、10億円超と算出されています(※)。「これらの結果はさることながら効率的な工事手順により工期を短く抑えた点も評価しています。常日頃からご利用者の要望に応えたいと考える我々にとって、文化発信を止めないことは非常に大切です。今回、完全な休館は1ヵ月程度、ホールなどの大きな施設も数ヵ月で施工していただき、とても助かりました。今後は、未更新の設備や機器への対応を検討しますが、ジョンソンコントロールズさんには、引き続き相談にのっていただきたいです」と渡辺氏は当社を講評するとともに、ESCO事業がもたらした効果を下記のように総括します。
「照明のLED化やエネルギー管理による年間光熱水費の削減効果はもちろん、設計施工の一括発注によるコスト削減、改修後の保守点検や維持管理、機器更新における依頼窓口の一本化は、施設所管者をはじめ、資産管理者、財務部門等における業務の簡略化と費用の抑制につながっています。また、会館スタッフが、エネルギー使用量を話題にするようになり、省エネ意識が生まれる機会にもなりました。当市は令和2年に『SDGs未来都市』の選定を受け、また翌年には『ゼロカーボンシティ宣言』を行っています。こうした取り組みを踏まえても、今回のESCO事業は非常に価値あるものであり、今後も推進していくべきだと考えています」
ロゼシアターを成功事例に、現在注目されている脱炭素社会や、その重要性が語られるネットゼロビルへの取り組みを通じ、富士市は今後どのような社会的価値を創造していくのでしょうか。「持続的な環境配慮型社会に向け、構造物も建て替えるのではなく既存施設の長寿命化を重視する傾向にあります。その点、当館は、『長期的な計画を持つ環境にやさしい施設』として、一つのモデルを示すことができました。もっとも、改修の終わりはESCO事業のスタートです。市を挙げて省エネ社会にさらに貢献するべく、日々の運用を改善しながら取り組んでいきたいです」
※「第3次 富士市行政経営プラン 令和元年度進行管理報告書」より(金額は契約時点ベース)