法政大学 新一口坂校舎

2019年1月1日

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オフィスビルを効率よく改修し明るく開放感のある大学院の新校舎を創造
JR中央線の市ヶ谷駅と飯田橋駅の中間、外濠通りと靖国通りに挟まれた高台の地域およびその周辺 を含むエリアには、法政大学市ヶ谷キャンパスの各種関連施設が点在しています。その歴史は1880 年に設立された「東京法学社」に始まり、大学令により初の私立大学設置が認可された1920年に財団 法人「法政大学」となり、翌1921年には現在地に校舎を新築し移転しています。明治、大正、そして激 動の昭和から平成へと125年余の伝統を背景に、絶えず革新に取り組みながら多くの人材を輩出し、「自由と進歩」を理念にいまなお21世紀の新しい大学の理想形を求めて躍進を続ける進取に富んだそ の精神には学ぶべき多くの事柄を見出すことができます。
この市ヶ谷キャンパスの一角、靖国通りから一口坂を外濠方向に下った右側に新一口坂校舎があり ます。法科大学院棟と隣接するこの校舎は地上6階・地下1階建て、もともとはオフィスビルとして使 われていた建物を改修し、2006年4月から主に専門職大学院イノベーション・マネジメント研究科の 教育研究施設として使用を開始、各フロアとも明るく清潔で開放感のある空間構成が印象的です。
「建物の改修には当初からESCO事業により環境に配慮した最新の技術を採用することを考えてい ましたので、省エネのための施策立案やデータの作成にはジョンソンコントロールズさんの協力が必 要でした。」と法政大学の施設部長である上遠野秀夫氏は語ります。「オフィスビルから学校施設への改 修ですから、ベースラインの設定には新設と同様の仮説を立てるほかありません。多少のズレが生じ ても見直しを掛けて調整し、2年目以降に落ちついてくればいいと考えました。」
2000年に竣工した市ヶ谷キャンパスのボアソナード・タワーと隣接する古い校舎を合わせて2005 年にESCO事業を実施したのを手始めに、次いで多摩キャンパス、そして新一口坂校舎とESCO事業 による運用展開は法政のスタイルとして着実に確立しつつあります。

「建物の改修には当初からESCO事業により環境に配慮した最新の技術を採用することを 考えていましたので、省エネのための施策立案やデータの作成には ジョンソンコントロールズさんの協力が必要でした。」

施設部長 上遠野 秀夫氏、施設部施設課主任 立石 誠氏

「資金調達」と「成果保証」でリスクのない省エネ改修を実現

「学校経営は民間企業と異なり年間収支に凹凸がきわめて少なく、設備改善などを含めてすべての経費が年度ごとにあらかじめ予算で決められています。そこで例えば改修にあたって省エネを目的に高効率設備の導入を考えた場合、ESCO事業のシェアード・セイビングス方式を利用すれば、ESCO事業者が省エネ設備に必要な資金調達を行ってくれるので、こちらは金融上のリスクを負う必要がなく予算取りの面からも最適な方法といえます。」と上遠野氏。

ESCO事業の契約には、初期投資に関する資金調達を顧客側で行うギャランティード・セイビングス方式と、ESCO事業者が資金調達を行うシェアード・セイビングス方式の2種類があります。今回の新一口坂校舎の改修にあたってはシェアード・セイビングス方式による10年間のESCOサービス契約を採用しています。改修時に新設した氷蓄熱型パッケージエアコン、高効率照明システム、高効率トランス、節水型トイレなどの設備は、ジョンソンコントロールズが所有し、ESCOサービス契約を結んでいるので、大学側の初期投資費用が不要となり経費の平準化が図られています。最新設備の導入による省エネの実現のみならず、夜間電力利用のピークシフトにより契約電力低減の効果も付加されました。また、これらの削減効果はジョンソンコントロールズによって保証されているので、大学側にはリスクがありません。また、当社のROCサービスによる遠隔監視、データの集計および解析により3カ月毎の詳細なエネルギーレポートの作成と提供など、設計・施工から保守・運用管理、そして診断まで、トータルにきめ細かなソリューションの提供によりESCOサービスの効率化を実現しています。

ESCO事業による省エネ推進とグリーン・ユニバーシティ理念の関係

こうしたESCO事業の推進は単に省エネ効果だけにとどまらず、CO2の削減による地球温暖化対策として、またISO14001認証に基づく環境保全活動の一環として、法政大学が積極的に取り組んでいる「グリーン・ユニバーシティをめざして」の理念とも深い関わりを持っています。この理念を掲げる発端となったのは、1999年の日本の総合大学としては初めてとなるISO14001の認証取得と、同年に開設した「人間環境学部」の誕生です。この学部は、人間社会から構造的に派生する問題という観点から、社会科学的なアプローチで環境問題に取り組むという文系の学部ですが、それなら学内そのものを環境に配慮したものにすべきではないか、学生も教職員も机上の空論ではなくそうした配慮を実践すべきではないかという提案がなされ、結果的に全学的な取り組みへと発展していったのです。

「2000年はボアソナード・タワーが竣工した年で、これを機に旧来のビラ貼りやタバコの投げ捨てなどをやめ、ISOのルールに従って校内の美化に取り組もうということになりました。例えば省エネに関していえば、日常生活の中でできる電気や水道の節約などをこまごまと実行に移したのですが、こうした小さな努力の蓄積では限界があると感じ、設備の改善による省エネルギーの推進という方向性が検討されるようになったわけです」と語る施設課主任立石氏。この省エネルギーの推進に加えて、再生紙の利用促進などによるグリーン購入の推進、各種用紙の使用量削減による省資源の推進、一般廃棄物量の削減によるゼロエミッションの推進など、具体的な改善活動により、2004年には第13回地球環境大賞「優秀環境大学賞」を受賞しました。

ESCO事業による省エネ対策は2年目を迎えたボアソナード・タワーで当初目標値の98.4%、多摩キャンパスで130%、新一口坂校舎で191%と、それぞれ目標数値に対して実施事例でも着実に効果が現れています。「新一口坂校舎については社会人の学生が多いビジネススクールという特性から、夏冬の休み、土日の休みが少なく、年間を通して稼働時間が長いことと、ジョンソンコントロールズさんの協力のお陰で特に効果が現れたのだと思います」と上遠野氏。こうした期待に応えて当社もまた、今後とも当社のROCサービスによるデータの集計および解析に基づく効果的なソリューションを提供し続け、より高い目的数値の達成に貢献していきます。

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