モード学園コクーンタワー

2019年1月1日

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課題 Challenges
  • 地域冷暖房供給とコージェネの併用による熱源の効率活用
  • 3フロアを2台の空調機でカバーするVAVシステムによる快適環境の創造

ソリューション Johnson Controls solutions
  • 熱源の有効利用を可能にする段数制御の設定と管理システムの提供
  • 空調機コントローラに最適化制御機能を兼用させて給気温度最適化を可能にする、VAVシステムの提案と実現
  • 効率の良い快適空間を創造する、Metasys®ビル管理システムによる統合管理

成果 Results
  • シンプルなハード構成で高機能な制御システムを実現し、メンテナンス上のメリットも付加

「高機能でありながらハードの数を減らしたシンプルな制御システムなので、 メンテナンス上のメリットも期待できます」

株式会社建築設備設計研究所 設計部 次長 関口 聡 氏

シンボリックで大胆な外観と3層ごとに内包された吹き抜けの学生サロン

コクーン(繭)をモチーフに中間部が膨らんだ地上50階建ての超高層ビル。表面のダイアゴナルフレームという構造鉄骨とアルミパネルが複雑に絡み合う幾何学模様の白い線は、絹糸をイメージしています。建物内部はセンターコアと平面が矩形を描く3つのタワーで構成され、曲面で包み込んだ空いた空間が3層吹き抜けのアトリウムになっています。このアトリウムは学生たちの交流の場であり、通常の学校でいえば廊下や校庭、学生サロンの役割を果たします。 斬新な外観と、3層(3フロア)単位を基本に積み上げていった超高層ビルという特異な内部構成、そして3層吹き抜けのアトリウム空間を校庭に見立てた近未来のキャンパス誕生の背景には、2008年10月の竣工に向け、設備設計上のさまざまな試行錯誤と新しい試みが繰り返されたことが、容易に想像できます。「建物の形状が特殊なのは一目瞭然ですが、この建物は階高がすべて異なります。たとえば1階と50階では100㎜ほど違います。ビルの中央が膨らみ、全体の外壁が曲面になっているので、階高を均一にすると外壁のカーテンウォールの長さが違ってしまいます。これでは精度が非常に悪くなるのでカーテンウォールの長さを均等にし、階高の方に微妙な差をもたせることにしました。また教室となる矩形のタワー部分を優先し、エレベータや階段などのセンターコア部分のデッドスペースに空調機などの設備機器やダクト、配管を収めなければならないので、これには大変苦労しました。さらに屋根が球体なので、設備機器を検討する際には全体を立体的に捉えなければなりません。これらのすべてはCGでシミュレーションを行い、現場で調整しつつ施工を行うという繰り返しでした。空調機のダクトや配管などもCGを確認しながらの施工で、CGシミュレーションなしに建築はもちろん設備機器などの施工を完成させることはできなかったと痛感しています」と当時のご苦労を振り返る株式会社建築設備設計研究所 設計部次長の関口聡氏。

 

熱源の効率活用とシンプルな構成によるVAV給気温度最適化制御

地域冷暖房供給施設からの熱源をより効率よく活用するためにコージェネレーションシステムを採用していますが、学校施設にはこのシステムで得た排熱を利用する場所がありません。そこで回収した排熱を逆に供給センターに送り返すという地域連携のもと、地域一体の供給効率を上げると同時に本施設の熱源の効率活用に結びつけるという方法を採用しました。 「地域冷暖房供給(DHC)とコージェネ(CGS)を併用し、なおかつ自己熱源を優先使用して制御するのは大変に難しい問題があります。今回のような併用の場合、負荷が上がるとレスポンスのいいDHCの方から上がっていくので、つねにCGSの方を100%にもっていくように制御し、下がってきた場合は常にDHCの方を絞るように組替えた台数制御ならず段数制御を設定しています。これらの制御はジョンソンコントロールズさんが担当し、段数制御を含む管理と運営に関しては供給センターに委託しています」と関口氏。「この建物にはファッションの東京モード学園に加え、IT・デジタルコンテンツのHAL東京、医療・福祉の首都医校の3つの専門学校が入っていますが、将来的に1万人の学生数を想定しています。そうなれば現在より負荷が高くなるのでDHCとCGSのせめぎあいがなくなり、効率化も安定すると思います。いずれにしても1年後の稼動データの結果を見るのが楽しみではあります」と言葉を続けます。 空調に関する当社への要請は、2層吹き抜けのアトリウム空間については校庭に見立てているので適宜でいいが、教室についてはオフィスビルと同等のきめ細やかな空調環境を創造してほしいというものでした。そして、3フロアを2台(2フロア1台+1フロア1台)の空調機で吹き、さらにVAVシステムによる給気温度最適化を実現するという課題への挑戦でした。その結果、通常VAVシステムを構成する上で使用する最適化演算コントローラを使わずに、空調機コントローラにその機能を組み込むことにより、オペレータ任せではなく、自動制御で最適環境を創造するという新しい試みを提案し、その実現に取り組みました。「これは同一フロアの複数教室を平面的に空調するのではなく、フロアの違う複数教室を立体的に空調するために、通常では悩みの種となる東西南北の方位による日射負荷の差に捉われることなく、同じ負荷条件の複数教室を空調するというメリットを生みました。さらにペリメータはすべてヒートポンプファンコイルで制御しているので、室内側がほぼ同じ環境という点も負荷バランスを均等にしているので、狙い通りの空調環境をつくることができました」と語る弊社東京支店計装技術統括部の佐野文俊。その言葉を引き継いで「ジョンソンコントロールズさんが特異な建物構造に非常に合致した空調ソリューションを提案してくれました。高機能でありながらも、ハードの数を減らしたシンプルな制御システムなので、メンテナンス上のメリットも期待できます。空調に関しては施主であるお客様をはじめ関係者の方々から満足しているという感想を耳にしています」と関口氏からうれしいコメントをいただきました。

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